目の前の山は高く感じる

先日、最近中途で入ってきた後輩と飲んだときにこう言われた。 「チーム内ではRyzさんがトップです」

確かに今の俺は、ごく小さなチームの中でリーダー的な立ち回りをすることが なぜか多くなってしまったのだけど、彼の言うトップとはそういう意味ではなく、 チーム内での技術力で一番上という意味らしい。

この話を聞いて思った。 あぁ、これって俺が他の人に対して思ってることと同じだ。

目標にする人

うちの会社は大きな会社ではないけれど、人間関係がとても好きで、 俺にとっては居心地の良い環境に居させてもらってると思っている。

新卒で入って今の会社・今の立場しか知らないので、 狭い世界しか知らない井の中の蛙と言われれば返す言葉もないけれど、 誰かにうちの会社を紹介することがあれば、自信を持って「良い会社だよ」と言えるし、 その理由を並べ立てることもできる。

関わってきた上司はみんな尊敬できる人たちばかりだ。 部下をよく見て、どんな話でも真摯に耳を傾け、柔軟な姿勢で人を育てる人。 誰もが認める広範な技術力で人の何倍も稼ぎ、その背中で人を引っ張る人。 他人がやらないことを自ら率先してやることで、あるべき姿を人に示す人。

この人たちに今の俺は育てられていると思っているし、 形は違えどそれぞれのスゲーと思うところを目標にしている。

後輩から見た自分

冒頭の言葉で、俺自身もいつの間にか目標にされているということを知った。 いや、後輩は既に何人もいるし、その中でそう見られている面もあるんだろうと 頭では理解していたつもりだったけど、初めて実感として湧いたと言うべきか。

俺自身はと言えば、ネットで調べ物をしているだけでも技術力の足りなさを毎日実感するし、 別にすごい資格があるわけでもないし、何か自慢できる一芸があるわけでもない。 ようやくエンジニアの端くれを自称できるようになった程度の俺では、 まだまだ足りないものが多すぎると思ってる。

会社内の上司や先輩は言わずもがなで、 今の小さいチーム内だけで見ても俺より経験も知識も上だと思う人がいる。 自分の方が上などと思ったことは一度もない。こんな状態で、思えるわけがない。

ないものをひたすら自分で並べるのも若干虚しいものがあるけれど、 今の自分自身を客観的に評価するなら、良くて「器用貧乏の消去法リーダー」だと思う。

そんなのでも、後輩から見たらスゲー人に見えていたらしい。

自分に下駄を履かせる

なんでそう見られるのだろうと考えると、単純に経験の差が一番だろうと思う。 年単位で、それも5年以上の単位で業界の経験が違うんだから、 彼から見ると俺は物凄い高い壁に見えているのかもしれない。

それだけではあまりに単純な話で終わってしまうので、他の理由を考えてみる。 もしかしたら、自分がそう見せていたのかもしれない。

前述の内容は嘘偽りない自己評価だけれども、それでも後輩に対して 「できない奴」として見られたいとは思わない。意識的か無意識的かはともかく、 日々の仕事の中で「俺はお前よりできるぞ」ということを周りに見せようとはしてるのだと思う。

…ということは、周りの人も実はそうなのかも?

俺がスゲーと思ってる人たちは、実はそうでもない……とまではとても思えないけれど、 実際は100のところを150に見てるのかもしれない。 俺も彼と同じように、今の上司に追いつける気がしない。 たとえ今の上司と同じ年齢まで経験を積んだとしても。

まぁ、他の人のことは知らないけれど。 実際以上に自分をスゴく見せて後輩の信頼や尊敬を勝ち取るというのは、本人にとっては実に都合の良い話だ。 きっと誰しもその程度のプライドはあるだろうから、それ自体は意外とごくごく自然なことかもしれない。

スゲー自分を目指す

自分の評価は自分が決めるのではなく他人が決めること。 そう考えると、俺の評価は周りでは(少なくとも件の後輩から見れば)スゲー人なんだろう。

実際にはそうではないと思ってるし、冒頭のやり取りで彼にもそう言った。 けど彼はきっと謙遜だと思ってるんだろう。その考え方を変えることはできないし、 変わることがあるとすれば、それは彼が成長して俺を追い越して行ったときなのかもしれない。

これを自分と上司に当てはめてみると、スゲーと思って尊敬していた上司が、 実は大したことないオッサンだと判明したってことになる。 想像してみると、やっぱり失望するな。追いかける背中はスゲーままでいて欲しい。

そう考えると、後輩に同じ想いをさせるわけにはいかないという気になってくる。 そう思わせないためには、少なくとも後輩が俺のことをスゲーと思ってる今のうちに、 スゲー自分を作るしかないのか。

そんな力が俺にあるかはわからないけど、少しぐらいは足掻いてみよう。 ここも、技術力向上を目指すブログと宣言しちゃったことだし。

もしかしたら、上司もそうやって今の姿を作ってきたのかもしれない。 そんだけ頑張って登ったのに、今でも俺に追いかけられてるのか。 上の人って大変なんだな。いくら登っても追いかけてくるやつがいるんだ。 エンドレスだ。

やっぱり、スゲー。


止まらない実行を目指すITエンジニア。

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